考察.6 結にして起となる物語

大団円で幕を閉じたウルトラマンメビウス。別途CBC3部作をまとめた考察も書きためているんだけど、いまのうちに「ウルトラマンメビウス」がどういう作品だったのかも、簡単にまとめておこう。とはいえメビウスのテーマについては過去の考察で書いており、かつそれがほぼ的を射ていた感触があるので、実際の展開と比較・検証する形でディテールをはっきりさせることができればと思う次第。

放映初期において、ここまでの考察を可能にしていたという事実こそ、メビウスという作品が強烈な光を放つゴールをはじめから見据えていた証明になるんでなかろーか。そして完全燃焼でメビウスに取り組んだ円谷プロダクションの志もね。

■考察.1 リュウは光の国へゆけるのか?(id:kka:20060423) (06/04/22)

上記を読むとネタが尽きたための懐古&商業主義的作品と思いがちですが、
(略)
ウルトラマン(シリーズ)を更なる地平へ導かんとする円谷プロ入魂の野心作だったりもするから、あなどれません。

昭和ウルトラマンへの回帰を標榜する「ウルトラマンメビウス」ですが、「地球人とウルトラマンのパートナーシップ」という テーマにおいては、紛れもなくネクサス・マックスに続くシリー ズ最新作なのです。

これは、もう説明の必要なし。まさか、このテーマをここまで極めてくれるとは思わなかった。ファイナルメテオール解禁時のサコミズ隊長のセリフが感無量。(★★★★★)

従来なら融合して1人の主人公になっていた2つの存在を、 それぞれ独立させて主人公2人制とした点において、本作は すべてのシリーズ作品の続編に位置するといえます。

シリーズにおける作品の位置づけとしてこう書いたんだけど、まさかテーマに留まらず、エースやレオや80の黒歴史をとりあげて続編を描くくらい具体的な続編になるとは思いもよらなかった。脱帽*1。(★★★★☆)

どういうことかというと、過去作品が地球人を「ウルトラマン の庇護対象」として描き、最終回で「ウルトラマンを助ける仲間」へと成長させることで物語に幕を下ろしてきたのに対し、 本作は地球人を「ウルトラマンのパートナー」として描くとこ ろからスタートしているのです。 だとすれば、その象徴となっているアイハラリュウは、過去 作品でウルトラマンと共に戦ったすべての地球人の精神性を 有していることになります。もちろん、その中にはウルトラ マンと融合・分離した地球人も含まれ……。つまりリュウは、 ハヤタ・ダイゴ・我夢・孤門・カイトら、歴代主人公(地球人) の「その後」に位置するキャラクターなのです。

当時は知るよしもなかったけど、この役割をリュウよりも強く担ったのはサコミズ隊長だったね。リュウの熱血漢という性格と上記で考察した役割の相性は決して良くなく、逆にサコミズ隊長のキャラクターは、『ウルトラマンのパートナー』として完璧だった。 ウルトラマンメビウスの主人公はミライとリュウで間違いないんだけど、ウルトラマンシリーズの主人公はサコミズ隊長なんだな。
考察を良い意味で裏切った展開に満足。 (★★★☆☆)

そうです、前作の最終回で地球人はウルトラマンのパートナー として、ウルトラマンの聖地「光の国」の門を叩いたのです。それでは、その続編であるメビウスでは……。 もうひとりの主人公アイハラリュウが、地球人として初めて光の国へ足を踏み入れそうな気がしませんか?

GUYSの基地が変形して空飛んだときには、「キタコレ!!」と思ったわけだけど、結局光の国には行かずじまい。でもリュウは最終的にウルトラマンに変身したので、今作で行かなくてよかったんだろう。もしメビウスに後日談があれば、リュウをはじめとするGUYSメンバーは、光の国に招かれるかもしれない、くらいの柔軟な着地が心地よい。
いずれにせよ、サコミズ隊長が冥王星軌道上でゾフィーから「とうとうここまできたのか」という言葉を受け取った描写で、宇宙へ旅だって終わったマックスの延長としての役割を果たしてるのが見事*2。(★★★☆☆)

■考察 2 昭和と平成のクロスオーバー(id:kka:20060430)  06/04/30

交差する線(クロス)から、絆の連鎖(ネクサス)へ。 交差する線(クロス)から、表裏を融合する無限環(メビウス)へ。

これも説明の必要ないね。クロスの企画書を引用しただけなので考察でも何でもなかったわけだけど、今読むとクロスの企画書はまんまメビウスだなぁ*3。(☆☆☆☆☆)


それにしても、昭和ウルトラマンを継承するメビウスと、平成ウルトラマンを象徴するヒカリが融合してフェニックスブレイブになり、その両者を俯瞰していた感のあるゾフィが光臨して共闘した展開に、ウルトラマンの無限の未来を垣間見た気がした*4

考察3 サコミズ隊長と5人の戦士(id:kka:20060501)  06/05/01

もしかすると、GUYSのメンバーはそれぞれ歴代ウルトラマン のメタファーとなっているのかもしれません。

人数がおんなじなので終盤でそれぞれの対応があったけど、メタファーにはなってなかったね。しかも対応は、コノミ=セブンしかあたってないし(★☆☆☆☆)

その正体がサコミズ隊長だとするなら、ウルトラ兄弟みたいな 強烈な個性の集団を統率できる優秀な隊長であることをすでに 印象づけているのかもしれません。

「可能性」と書いて予防線を張ってあるけど、いい加減なことかいたなぁ。もしサコミズ隊長がもともとゾフィーだとしたら、地球は結局ウルトラマンに庇護されていることになるので自分で主張したテーマを否定するっての。サコミズ隊長がラストで、人としてゾフィーに合体するシークエンスは、こう考えると至高の展開だよなぁ*5。 (★★☆☆☆)

06年9月上映予定の劇場版では、ウルトラ6兄弟(ゾフィーから タロウまで)が登場するそうです。その劇中でGUYSメンバーが、 それぞれ対応するウルトラマンと何らかの交流するのかもしれません、

論外。劇場版では交流どころか、出番もなかったね。そりゃ、オリジナルキャストの御大がでてきたら出番はないよ。(★☆☆☆☆)

■考察 4 ヒカリは絆だ(id:kka:20060612) 06/06/12

ウルトラマンヒカリは、ウルトラNプロジェクトのウルトラ マン、すなわちウルトラマンネクサスの延長に位置するキャラクターなのです。なによりウルトラNプロジェクトのウルトラマンは、「光」と 称されていたのですから。

最終回でリュウがヒカリを受け継いだことで確定したね。スポンサーの要請で生まれたキャラクターですらも、このように作品のテーマに昇華できる懐の深さこそ、40年の歴史を持つウルトラマンの真骨頂だーよ。(★★★★★)

昭和ウルトラマンの象徴であるセリザワ隊長が、世代交代を否定し物語の前線で戦い続けるとは思えませんし、そもそも彼の肉体は限界のようです。

結局最終回までセリザワ隊長だったなぁ。(★★☆☆☆)
もし第3クールの客演シリーズがなかったら、セリザワとリュウの間に入るデュナミストが出てたに違いない。イサナなんて、絶好のターゲットだったのにね(負け惜しみ)

■考察.5 平成ウルトラマンの凱旋 06/10/30

ウルトラマンと地球人が共に地球を守っていくための楔となる このセリフには、ひとつの可能>性が秘められています。すなわち「人はいつの日かウルトラマンになれる」という未来。

このテーマについては「第30話:約束の炎」以降つっこんだ内容はなく、「パートナーシップ」を追求する展開になっていたなぁ。ただし、それは「人はいつの日かウルトラマンになれる」というテーマを否定したわけではなく、今後のウルトラマンに引き続き課していくんだろう。(★★☆☆☆)

あくまでも私見ですが、今作のクライマックスに「“自らの意志”でウルトラマンの力を手にする地球人」の可能性が描かれるのではないかと考える次第です。

これを書いたときは、リュウが自分の意志で臨死体験を経ずにヒカリと融合変身すると確信的に予測してたんだけど、結局リュウは墜落という臨死体験からウルトラマンヒカリ(セリザワ隊長)の手助けによって変身しちゃった。そのため希望の一端にはなり得ず、一瞬「ヤバイ」と思ったんだけど、代わりにサコミズ隊長がやってくれました。まさか、メビウスでもヒカリでもなく、ゾフィが「生きた人間と融合」するなんて! この展開は個人的に一番の驚愕&喝采ポイント。

サコミズ隊長は、初代ウルトラマンの時代から現役を続けているウルトラマンの生き証人であり、言ってしまえば「歴代ウルトラマンの伴走者」だったわけ。その彼が最終回に、最強の勇者ゾフィに変身するというのは、ウルトラマンネクサスで孤門が最後の最後でウルトラマンノアに変身したのと同等の意味を持つんだ。孤門も、ネクサスという1作品の中だけだったけどウルトラマンの伴走者だったからこそノアに変身する資格を得たわけだしね。


サコミズ隊長は、リュウ以上に孤門だったんだなぁ*6(変な日本語)


テーマレベルでどんでん返しを仕掛けてくるメビウスは、どっかオカシイ。(★★★★☆)

絞め

というわけで、序盤(遅くとも2クール)でテーマを描き到達点を定義したウルトラマンメビウスが、いかに骨太であったかを我田引水的に分析した。確かにウルトラマンメビウスは「ゆるい」部分の多い作品だったけど、その一方で「40年の総決算」という、コンテンツ大国日本においても類を見ない凄いテーマをまっとうした作品だということが分かっていただけただろうか。

ウルトラマンメビウスが
かつて語られたウルトラマンたちの「結」であり、
これから語られるウルトラマンたちの「起」となることを
この考察から感じてもらえれば、かなりうれしーなぁ。

どっとはらい

このエントリーの参考となるブログさん
ゼロ式感情戦闘記N
特撮レビュー 4/1 part1
そして登場人物それぞれのセリフの一言一言にさえ「今まで積み上げてきたもの」を思い起こさせる意味が内包されていて、それが更なる感動を生み出していたのも○。よくここまで今までのストーリーを生かした言葉が出てくるものだと感心しました。タイトルの「心からの言葉」とはよく言ったものです。
素顔のままで
menesiaのひとりごと
どの回も名作だったとは言わない。けれどもこうして見終わった時、忘れているものを思い出させてくれるような、妙な羞恥の中に押し込めて見ないふりをして来たものを見せられているような・・・「これが残っていてくれて良かった」と思うような、不思議な後味があった。

*1:テーマで続編に位置していたからこそ、具体的な続編を描くことが出来た点に注目。テーマがマッチしないでで過去作品の後日談エピソードを書いても、ウルトラマンマックスの「狙われない街」のように外伝になってしまうので。

*2:やはり当初リュウに課せられていた重責は、サコミズ隊長がサポートしたんだな。

*3:どっちかというと「M78星雲のウルトラマン」よりだけどね。

*4:次代のウルトラマンを手がけるクリエイターたちの産みの苦しみは、相当のものだろうけど

*5:「考察.5 平成ウルトラマンの凱旋 」のところで後述

*6:ネクサスとメビウスの関係性については、今書いてる「CBC3部作考」で触れるはず。