考察.2 解なきメッセージ

仮面ライダーカブトが完結しました。水嶋ヒロ演じる主人公や凝ったクロックアップ描写など「数多くの魅力を持っていた」反面、物語の構成バランスの悪さなど「欠点をあげたらキリがない」という、長所と短所が相殺しあうひどくピーキーな(とんがった)作品でした。


それでも「良い作品」であり「良い最終回」だったと思います。物語の基幹を、紆余曲折を経つつも最後まで貫いたところは、やはり「仮面ライダー」の直系だな、と。物語の基幹が何かというと、「正義の盟主“天道総司”が、完全勝利する物語」であり、「加賀美新の成長が、天道に微かな変化をもたらす物語」であるということ。


異論反論があることとは思いますが、「オレが正義。」と言い切る仮面ライダーカブトこと天道総司を考察しようとすると、世界の警察を標榜する「アメリカ合衆国」とイメージが重なるのです。

などなど。また、日常に生きる妹「樹花」と異形に産まれた妹「ひより」という絶望的な二者択一から、両者とも救ってみせた物語からは、和製ヒーローというよりもアメリカンヒーロー的な思想を感じませんか。いずれにせよ、本作で描いていた「正義」とは、「正しい判断」と「圧倒的な武力」によってもたらされるものであり、「アメリカ合衆国の正義」と一致するものでしょう。


そう考えると、もうひとりの主人公「加賀美新」が日本国的な立ち位置にいることに気づきます。無力だった彼が天道の助力を得て、対等な立場まで成長したのは現在の日本に通じます。 最終回で、彼に課せられたテーマが「天道と共に生きる仲間になるのではなく、天道と共に立つ友人となること」だったことが明らかになりました。いうなれば「自立(インディペンデント)」ですね。これ以上書くと外交談義になってしまうため割愛しますが、加賀美新の成長物語には、未来の日本を担う子供たちに向けた「解のないメッセージ」が込められていたと思うのです。


そして天道の正義が「絶対的な正義から、変化を許容する正義」へと変化したところに、未来への希望を感じることができるのかな、と。


いろいろ気になる点もありましたが、ややもすればすぐにシラケしらけてしまう言葉「正義」に真っ向から挑み、それをカッチョ良く描いて見せた「仮面ライダーカブト」は、「いい作品だったなぁ」と感じる次第。


一年間、愉しませいもらいました。 僕と同じく(いろいろと)ハラハラドキドキ視聴されたみなさん、おつかれさまでした。


※まったく更新のないブログですが、これからは熟考したネタよりも、更新頻度を高める方向にシフトするかもしれません。まぁ、どうなるかは今後次第と言うことで。