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〈少年〉の葛藤が〈世界〉に2つの変化をもたらしました。


1つは〈鬼〉たちの変質。楽器で〈妖怪〉を調伏していた〈鬼〉は、〈刀〉を手に入れ、滅びるまで戦い続ける宿命を背負ったのです。〈少年〉の「〈赤鬼〉の側に居てはいけない」という想いが、〈少年〉と〈鬼〉たちの立場を更に隔てたのでした*1


2つめは〈影の少年〉の誕生。それは、〈少年〉の「ずっと〈赤鬼〉の側に居たい」という想いの具現でした。〈影の少年〉は〈少年〉の〈日常〉*2に割り込み、居場所を脅かします。〈少年〉と〈赤鬼〉の関係も邪魔します。つきまとう〈影の少年〉を疎ましく思っても、〈少年〉は拒絶することができません。なぜなら〈少年〉が成長するために不足している要素を、〈影の少年〉は持っていたのですから*3


いずれにせよ〈少年〉は、この2つの変化によって、より一層苦悩することになりました。その苦悩が、自分を成長させていることに気づかぬまま……。


それから何週間の後。
〈赤鬼〉が〈妖怪〉相手に苦戦しているところに〈少年〉は遭遇しました。 〈少年〉は〈赤鬼〉に教わったことを思いだし、窮地を助けます。〈少年〉に礼を述べる際、〈赤鬼〉ははじめて〈少年〉の名前を呼びました。それは〈少年〉の〈成長〉を認めたためなのか、それとも〈少年〉に〈鬼〉としての素質を見出したからなのかはわかりません。ただ、〈赤鬼〉に名前を呼ばれたという事実は、〈少年〉をある行動に駆り立てました。


未だに葛藤を続けていた少年は、自分の名を呼ぶ甘美な響きに負け、〈影の少年〉と共に〈赤鬼〉の弟子となる意思表示をしてしまったのです。しかし、それは〈少年〉の本心ではありませんでした。
その気もないのに〈赤鬼〉に弟子入りした〈少年〉。葛藤の泥沼に陥った〈少年〉の心に亀裂が入り、〈世界〉に〈カタストロフ〉が訪れます。


つづく


響鬼Translate : [] [] [] [転] [] []

*1:この変化は「〈子鬼〉が〈角〉を失い、〈少女〉へ戻る話」「1人の〈鬼〉が滅ぶ話」などのエピソードを生み出したのですが、割愛します。ご了承ください。

*2:持田ひとみが〈日常〉の象徴でした。

*3: 同時に〈影の少年〉に不足している要素は、〈少年〉が持っていました。