考察.1 リュウは光の国へゆけるのか?

現在、土曜日17:30〜放映中(関東地区)のウルトラマンメビウス初代ウルトラマンからウルトラマン80の各作品が同じ時系列の出来事だと公に設定*1した上で、25年ぶりの正統な続編として企画されたシリーズ最新作です。 こう書くとネタが尽きたための懐古&商業主義的作品と思いがちですが、実際はさにあらず。前2作にあたるネクサスとマックスがシリーズを包括*2したのを承けて、ウルトラマン(シリーズ)を更なる地平へ導かんとする円谷プロ入魂の野心作だったりもするから、あなどれません。


そんなわけで、まだ第3話までしか放映されてません*3が、さっそく考察を開始する次第。


最初のお題は、もうひとりの主人公アイハラリュウについて。彼は「ウルトラマンの去った世界を守るのは自分たち」だという使命に燃え、ジョギングの途中で「ウルトラ5つの誓い*4」の高唱を日課とする、防衛チームCREW GUYSのメンバーです。

ウルトラマンにならない男

ウルトラマンメビウスの物語は『宇宙警備隊の新米「メビウス」が、大隊長「(通称)ウルトラの父」から地球勤務を命じられて、歴代ウルトラマンのように地球で活躍できることに胸を熱くする』ところから始まります。そして時同じくして、地球には四半世紀ぶりに宇宙から怪獣が襲来*5。防衛準備に乏しい人類は、CREW GUYSを全滅され、いきなり大ピンチに。しかし「リュウ」は、地球を守るため最後の戦力である自機で特攻する覚悟を決めーー。


もし、あなたがウルトラマンメビウスについてなんの知識も持っていないのなら、上記を読んで「ははぁ、このリュウってのが、メビウスと融合するんだな。ウルトラマンは変わらないなぁ」などと、早合点でニヤリとしてるかもしれません。なぜなら歴代ウルトラマンの多くは、死に瀕した地球人と融合する形で地球に潜伏してきたのですから。ところがどっこい。この直後、リュウは同乗していた隊長*6が脱出装置を動かしたおかけで助かります。そして、光臨したメビウスが怪獣を退治するシーンを目の当たりにし、己の無力さに打ちのめされる羽目になったのでした。


一方、初陣を飾ったメビウスですが、勝利とはいえ市街に甚大な被害を及ぼす結果に終わりました。その惨状を見たリュウは、なんと正義の味方らしからぬ戦いをしたメビウスに怒鳴りつけます。「なんて下手くそな戦い方だ! 何も守れてないじゃないか!」と。浴びせられた罵声に熱き魂を感じたのか、その夜メビウスはCREW GUYSの新入隊員「ヒビノミライ」としてリュウの前に姿を現し*7、尊敬のまなざしと共に「一緒に戦わせてください!」と頭を下げるのでした。

■最終回の続きを担う男

「未熟なウルトラマン」と「ウルトラマンの志を持つ地球人」の出逢いから始まった「ウルトラマンメビウス」の物語。従来なら融合して1人の主人公になっていた2つの存在を、それぞれ独立させて主人公2人制*8とした点において、本作はすべてのシリーズ作品の続編に位置する*9といえます。


どういうことかというと、過去作品が地球人を「ウルトラマンの庇護対象」として描き、最終回で「ウルトラマンを助けるパートナー」へと成長させることで物語に幕を下ろしてきたのに対し、本作は地球人を「ウルトラマンのパートナー」として描くところからスタート*10しているのです。


だとすれば、その象徴となっているアイハラリュウは、過去作品でウルトラマンと共に戦ったすべての地球人の精神性を有していることになります。もちろん、その中にはウルトラマンと融合・分離した地球人も含まれ……。つまりリュウは、ハヤタ・ダイゴ・我夢・孤門・カイトら、歴代主人公(地球人)の「その後」に位置するキャラクター*11なのです。

■光の国を目指す(?)男

地球人の主人公が「ウルトラマンのパートナー」として共に戦う構図は、シリーズ前2作(ネクサスとマックス)でも重要な場面で描かれており、2004年以降のウルトラマンのトレンドともいえます。特にマックスでは、最終回で窮地に陥ったウルトラマンの意志によって強制的に分離させられた主人公カイトが、地球人としてウルトラマンを救う様子を描き、まるで次回作となる本作を示唆していたかのようでした。


昭和ウルトラマンへの回帰を標榜する「ウルトラマンメビウス*12」ですが、「地球人とウルトラマンのパートナーシップ」というテーマにおいては、紛れもなくネクサス・マックスに続くシリーズ最新作なのです。


さて、そのウルトラマンマックスの最終回。ウルトラマンが去っていった大団円の後に、50年後のエピローグがありました。カイトと同じ顔の孫が、銀河調査団に参加して宇宙(M-78星雲)へと旅立っていったのです。そうです、前作の最終回で地球人はウルトラマンのパートナーとして、ウルトラマンの聖地「光の国」の門を叩いたのです。


それでは、その続編ウルトラマンメビウスでは……。
もうひとりの主人公アイハラリュウが、光の国へ足を踏み入れる最初の地球人になる可能性が示唆されていると思いませんか?


どっとはらい

このエントリーの参考となるブログさん
特撮ヒーロー作戦! 彼らが結ぶ絆のように、ウルトラの各作品もまた絆でつながっている…
昭和があるからこそ、平成が生まれ、そして平成の先に、このメビウスがある。
でいりーひまつぶし"ガイア"や"ネクサス"のような、リアル路線も受け継ぎ、「人間としてのウルトラマン」を描くことで、平成ウルトラマンの系譜を見事に体現しています。
Old Dancer's BLOG 風船のシーンからミライ初登場への一連の流れ。これ、実は飛んでいってしまった風船=今まで地球を守ってくれていたウルトラマンたちなのではないかと思い至りました。だから、ミライは飛んでいってしまう風船を捕まえるのではなく、別な風船=メビウスを携えて、女の子=人間の前に現れたのですね。

*1:実際に繋げると矛盾が多いので「設定」された世界観と考えるべきでしょう。

*2:ここら辺が参考文献というか過去ログ。
http://d.hatena.ne.jp/kka/20060115/1137313495
あー、マックスもまとめたいですね。というかネクサス論の続きもあるし。

*3:1年後に読み返したらまったくデタラメなことが書いてあるかもしれません。

*4:帰ってきたウルトラマン」の最終回で、ウルトラマン(ジャック)が自分を慕う少年に残した格言。ウルトラマンが地球人に託した具体的なメッセージとしては貴重だけど、中身はどうでもいい内容。これをリュウが知っていることにより、彼が「過去作品でウルトラマンと共に戦ったすべての地球人」、すなわち視聴者だった当時の少年のその後(=現代のパパ)の精神性をも有していることを示唆してます。...ソツがないですね。

*5:このディノゾールという怪獣は、ウルトラマンマックス胡蝶の夢」で登場した制作途中の怪獣だとか。

*6:この隊長はリュウの師匠。リュウ以上に「過去作品でウルトラマンと共に戦ったすべての地球人」の精神性を宿していると考えられます。公式には「特攻して行方不明」という扱いなので、今後、キーパーソンとして再登場することは必須でしょう。楽しみですね。

*7:実際には、怪獣が飛来する前にリュウとミライが出逢うシーンがありました。このシーンのあったおかけで、リュウが変身しないことに違和感をもつ視聴者はいなかったとも言えます。丁寧な演出ですよね。

*8:ウルトラマンガイアでアグルというライバルが登場した時から、平成ウルトラマンは2人主人公の可能性を模索していたのかも。え? エースの北斗と南? いやいやw

*9:地球人が成長してる分、やってくるウルトラマンは未熟じゃないとバランスがとれない罠。ウルトラの父の人選は、きっとそういう配慮があったんですよ。地球は宇宙警備隊のO.J.T.に適当な土地なのですw

*10:これを書いてる最中に第3話「ひとつきりの命」が放映されました。あらら、コノミちゃんの「ウルトラマンを助けて、(いままで地球を守ってくれて)ありがとう、と伝えたい(うろ覚え)」という台詞にすべてがつまっちゃってるよ。

*11:こう考えれば、リュウが新しいウルトラマンと融合しなかったことにも納得が行きますよね。

*12:ちなみにこの「メビウス」というタイトル。個人的には「昭和ウルトラマンと平成ウルトラマンを表裏に見立てて、それを融合する作品」という意味が込められてるのではないかと思ってます。