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〈世界〉が救われてから1年。


〈少年〉は、〈夢〉の成就のために鍛える日々を過ごしていました。〈鬼〉の修行と同様に険しい道ですが、〈少年〉の決意は揺らぎません。なぜなら、その〈夢〉*1はあの戦いの果てに自分で掴んだのですから。


〈赤鬼〉と過ごした日々は、過去の思い出。〈少年〉は自分にそう言い聞かせて、<鬼の住処>に足を運ぶこともしませんでした。もしかすると、〈赤鬼〉の姿を見たら最後、せっかく見つけた〈夢〉が崩れ、再び〈赤鬼〉に師事してしまうのを怖れたのかもしれません*2


そうやって〈少年〉が引いた心の境界線を破ったのは、なんと〈赤鬼〉の方でした。ある日、〈赤鬼〉が〈少年〉の前にひょっこり顔を見せたのです*3。その場は挨拶だけで別れましたが、〈少年〉の中で〈赤鬼〉の存在は一気に膨れあがりました。


直後、〈少年〉は大きな試練に遭遇します。過去の〈少年〉なら裸足で逃げ出すような命賭けの試練でしたが、〈少年〉は果敢に挑みました。しかし、どうしてもあと少し力が及びません。脳裏にちらつく〈赤鬼〉の姿。力尽きる寸前、ついに〈少年〉は、助けを求めて〈赤鬼〉の名を呼んでしまいました。


その時、救いの手を差し伸べたのは、なんと〈赤鬼〉のもとで修行を続けていた〈影の少年〉でした*4


突然の再会に驚くのも束の間、今度は〈少年〉の家の近所に〈妖怪〉が現れたとの報せが入ります。〈赤鬼〉の名を呼ぶ〈少年〉の叫びを聞いて、 〈妖怪〉が〈少年〉の〈日常〉をも脅かしはじめたのでした。〈少年〉と〈影の少年〉は反目をやめ、平和な〈日常〉の救出に向かいます。


 〈少年〉は〈人〉として。
 〈影の少年〉は〈鬼〉として*5


2人は〈妖怪〉の出現にも臆さず懸命に戦いました。それでも〈妖怪〉には及ばず"あわや"という時、到着した〈赤鬼〉が〈妖怪〉を一蹴。〈日常〉の危機は、すんでのところで守られたのです。
この共闘を経て、〈少年〉と〈影の少年〉は互いに相手を認め合いました。それは同時に、〈少年〉が自分の〈夢〉を誇りに思った瞬間でした。その結果、〈少年〉の心の中にわだかまっていた葛藤はすべて消失したのです。


その後、〈少年〉は〈刀〉を捨てた〈赤鬼〉に本心を語りました。「〈赤鬼〉に憧れていたが、〈鬼〉にはならない」と。すると〈赤鬼〉は〈少年〉のすべてを肯定し、再び〈少年〉を受け入れたのです。 「〈俺(赤鬼)〉の側で、〈人〉として成長すればいい」と。


「〈赤鬼〉の様になりたい。
 共に暮らしたら、〈赤鬼〉みたく成長できるだろうか」


〈少年〉がはじめて〈赤鬼〉と出逢った時に願った〈夢〉の成就へと向けて、〈世界〉は動き出します。



この先、〈少年〉が壁にぶつかるたびに、心の葛藤は〈妖怪〉となって再び〈少年〉の〈日常〉を脅かすでしょう。なぜなら〈人の世界〉と〈鬼の世界〉は、〈少年〉と〈赤鬼〉の意志によって固く結びつけられてしまったのですから。そんな時、〈少年〉は〈影の少年〉と協力して克服に努め、それでも力及ばない時は〈赤鬼〉に助けを求めるに違いありません。それでいいのです、人はそうやってゆっくりと成長していくものだから。



どっとはらい


※「仮面ライダー響鬼」の制作に関わったすべての皆さま、僕と同様に物語の顛末を視聴された皆さま、本当におつかれさまでした。


響鬼Translate : [] [] [] [] [] [末]

*1:〈少年〉の〈夢〉は、〈鬼〉と同等の困難さがあれば何でもよかったのでしょう

*2:この〈少年〉の(以前に比べればささやかな)葛藤が、未だ〈鬼〉を〈刀〉の呪縛に絡めていたのでした。

*3:〈少年〉可愛さゆえの〈赤鬼〉のこの(軽率な)行為(結界破り)が、〈妖怪〉を〈日常〉に呼び出す結果になります。もっとも〈赤鬼〉は、〈少年〉と〈日常〉に対して全責任を負う覚悟ができていたんでしょうね。

*4:〈影の少年〉が〈少年〉を救ったということは、〈少年〉は〈赤鬼〉の力を借りず、自力で試練をクリアしたことを意味します。

*5:〈影の少年〉の変身は、〈少年〉が〈鬼〉に師事し続けていた場合の姿の投影でした。それは同時に、〈夢〉に向かって鍛えている〈少年〉の成長の証明ともなっています。