考察.付録 君は僕に似ている

■符合

    • 新人類と旧人類のいさかい。
    • 新人類でありながら旧人類のために戦う若者。
    • 記号として登場する主役ギア・メカ。
    • 新人類と旧人類の間に立つ遊撃軍。
    • 3つ巴の戦い。


とある作品のストーリー骨格を抜き出してみました。「種としての人類同士の対立」も「3つ巴の戦い」も、さして目新しいテーマではなく、これだけで何の作品かを特定することは困難です。では、登場人物・人間関係を加えてみましょう。

    • 各陣営に所属する少年・少女の群像劇。
    • 主人公たちを指導する大人の不在。
    • 互いに理解し合うことのないキャラクターたち。
    • 遺伝子実験の失敗作として劣等感を抱くエゴイスト。
    • 新人類軍を指導する中年紳士。


ここまで要素が並べば、かなり絞り込むことができます。 もちろんこの考察のテーマである「仮面ライダー555(以下、555)」だ、と。


ところが、それだけではありません。面白いことに、昨年秋に終了したアニメ「機動戦士ガンダムSEED DESTINY(以下、種デス)」にあてはまるのですよ、これらが。「都合のいいところだけ抜き出して何言ってるんだ」という意見はもっともなのですが、以下の要素までも加えるとどうでしょう。

    • 物語の進行と共にアホになっていく新人類。
    • テーマを回収しきれない(ぐだぐだな)最終回。


ね、偶然にしても面白いと思いませんか。もちろん、555と種デスの制作された背景やスタッフ、実際のストーリー展開やキャラクターを比較すると、パクリはおろかオマージュと呼べるような点も見つかりません。555と種デスは、明らかに異なるです。


それでは、上記のような符号は何を意味しているのでしょうか。

■異工同曲

異なるスタッフによって同じ時代に制作された555と種デス。前述の符合で見えてくるのは、この両作品が時代性の反映という点において同じベクトル(テーマ)を目指していたことです。

    • 主人公たちを指導する大人の不在。
    • 新人類軍を指導する中年紳士の存在。

 → 父性欠如による世代断絶

    • 各陣営に所属する少年・少女の群像劇。
    • 互いに理解し合うことのないキャラクターたち。

 → 複雑化する世界情勢、コミニュケーション能力の低下

    • 3つ巴の戦い。
    • 遺伝子実験の失敗作として劣等感を抱くエゴイストの存在。

 → 己の信念(正義)が他陣営では否定される混沌とした世界


「世界が混沌である」ことの表現を優先し、予定調和の展開を放棄した555。「世界が混沌である」ことを表現する過程で、いつのまにか制作サイドが混沌となってしまった種デス。その優劣を比較することは避けますが、どちらも時代性を反映してみたものの物語としての到達点(理想論)を提案すらできないまま終幕となった点に、テーマの難しさを感じずにはいられません。


ある意味投げっぱなしとなっているこのテーマに対して、結論を導き出せる作品が将来誕生することを願うばかりです。


どっとはらい